「ハープがある! ・・・でも何からどうすればいい?」

進級・進学・新任のシーズン。
赴任先にハープがあって「やった!」という興奮もつかの間、あわただしい引き継ぎの中で「ハープのことなんて聞いてなかった」と呆然となさる新任の先生も多いようです。
生徒さんの方も「先輩がいたときはわかってると思ってたのに、自分一人だとやってることが正しいのか自信がない。間違った使い方をして壊しちゃったらどうしよう」と不安を抱えていらっしゃるのではないでしょうか。

年度始めには、まず、以下の点を確認しましょう

年度はじめの基本チェックポイント

 1. 使っているのはどんなハープ?
 2. スペア弦はそろっていますか?
 3. チューニングハンマーはありますか?
 4. いざというときのために


1. 使っているのはどんなハープ?

  〜ハープのメーカー、種類、機種を把握しましょう〜

「えっ?ハープはハープじゃないの?」とびっくりされる方もいらっしゃるのではないかと思います。でも「ハープ」といっても各種様々あり、タイプによって、また機種によっても、使用する弦の種類や弦の番号の数え方が違うのです。
(くわしくはこちら「ハープについて」「弦のオクターブと番号」 をご覧ください。)

使っているハープの種類や機種を把握していないとどんなときにこまるのか?
たとえば、時折(でも梅雨〜夏はかなり頻繁に)お電話でこんなやりとりをすることがあります。

「ハープの弦を買いたいんですが・・・」
「はい、ハープの種類を教えていただけますか?」
「えっと・・・・・ハープです」
「ペダルで操作するタイプでしょうか? レバーで操作するタイプでしょうか?」
「レバー・・・かな? なんかそれっぽいものが上の方に付いています」
「脚が付いているタイプでしょうか? それとも下まで台になっているタイプでしょうか?」
「あし? ・・・・あ、小さいのが4つあります。
 ・・・・すみません、ペダルもありました」
「ペダルがある? では、グランドハープ(=ペダルハープ)ですね。
 機種はおわかりになりますか? 弦は46弦、もしくは47弦でしょうか?」
「ええと、いち、に、さん・・・」

たくさんの楽器が練習しているそばからお電話いただくことが多いのも相まって、弦のご注文までなかなかたどり着けません。

楽器の機種は、保証書などでご確認いただけますが、AOYAMAの製品には楽器本体にも記載があります。

・ペダルのあるハープ
 = ペダルハープ(グランドハープ)の場合

 腕木(ハープ上部のS字型に曲がった部分)の金属プレートの柱よりの位置に記載があります。(写真1)ペダル
 また、響胴内部にも製造番号とともに機種名を記されています。(写真2)
 ※(写真3)のように腕木のプレート部に製造番号も刻印されている楽器もあります。

・ペダルがなく、レバーで操作するハープ
 = ノンペダルハープ(140シリーズ、130シリーズ、34Sシリーズ、サウルハープ25S、29S)の場合

 響胴の底に刻印で機種と製造番号が記されています。(写真4)レバー
 ※ご確認の際には楽器を倒さないよう、くれぐれもお気をつけください。
 (一部の機種ではペダルハープと同様に響胴内に記載のある楽器もございます。)


写真1

写真2

写真3

写真4


2. スペア弦はそろっていますか?

 〜ハープの弦は消耗品です〜

「大変です、ハープが壊れてしまいました!」というお客様からのお電話、よくよく伺ってみると「弦が切れた」ということだった・・・・。
笑い話のようですが、実は毎年1〜2件はあるものなのです。
お客様に率直に「ハープの弦は切れるものです」と言ってしまうとお叱りをうけます。
でもやはり、弦は切れるものなのです。
ハープとは、木製の三角の枠の中に、ナイロン、ガット、金属でできた弦が張っており、それぞれの素材は温度と湿度の変化によってそれぞれ違う延び縮みをします。急に雨が降ったり、寒くなったりあたたかくなったり、風が吹いて乾燥したり、と気温・湿度の変化があれば切れるのは当たり前のことなのです。
楽器を弾くときも弾かないときも、常に温度・湿度を一定に保てば弦が切れるのを最小限に抑えることはできますが、博物館の保管庫並みの温度・湿度管理は人間が演奏する「楽器」の性格上困難ですし、莫大な費用がかかります。また、どんなに温度・湿度を管理したとしても、使用頻度の多い弦が切れるのを防ぐことはできません。
現実問題として、温度・湿度の管理は楽器に損傷のない程度にとどめ、弦はスペア弦を用意して切れたら張替える、とういう方が安上がりです。

スペア弦は全弦1セットは用意しておいて、使った分また購入して補充しておくのが理想的ですが、ペダルハープの場合1セット10万円越えという金額になってしまいます。ノンペダルハープですと、機種にもよりますが、1セット15,000円〜52,000円程度。
予算的に難しい場合には、まずナイロン弦とガット弦の部分のスペアを用意しましょう。ペダルハープの場合、それでも8万円弱します。
「ペダルハープを使用しているんだけれど予算は超逼迫状態!!」という場合には、ひとまず0oct.〜4octを用意し(5万円弱)、5oct.のガット5本(3万円弱)は本番直前に用意するという手もあります。が、かなり綱渡り的な技ですので、場合によっては速達料金・宅急便料金など、送料が馬鹿にならないケースも。

また、ワイヤー弦は切れにくいとはいっても、高音側の何本かは演奏中に切れることもありますし、延び縮みが小さい素材ですので、急激な温度・湿度の変化やチューニングの間違いで切れてしまうこともあります。錆や経年劣化で音質も次第に落ちてきます。余裕のあるときにはスペアも用意しておきましょう。

今すでに弦が張っていないところがある状態のハープでしたら、それはピアノの鍵盤がないようなもの。
「47本もあるんだから」なとど言わず、スペアを含め2本用意しましょう。
どの弦を購入すればいいのかについては、こちらのハープの弦の種類と数え方をご覧ください。


3. チューニングハンマーはありますか?

 〜これがないとはじまらない〜

ピアノの調律は、調律師さんが専用の道具を用意してやってくれますが、ハープの調律(チューニング)は、演奏者自身が、その都度行います。なので、ハープを弾く人は常にチューニングハンマーを持ち歩くことになります。
・・・・が、これがかえってあだとなって、ハープの担当者が交代したらチューニングハンマーが行方不明に、ということが学校ハープでは往々にして起こりがちです。
練習室や楽器庫に「チューニングハンマーはここ!」という保管場所を確保できるといいですね。
(楽器本体に取り付けるチューニングハンマーホルダーが市販されていますが、雑音の原因となりやすいため、弊社ではおすすめしておりません)

チューニングハンマーがどうしても見つからない、という場合には別途購入することができますが、メーカーによってチューニングピンの規格が異なっているため、他メーカーのチューニングハンマーは使えないことがほとんどです。
メーカーを確認してから注文しましょう。
また、メーカーが同じであっても、製造年・機種により異なる場合もありますので、注文の際には使用楽器の機種と製造番号を知らせた方がスムーズに入手することができます。


4. いざというときのために

 〜「その時」は意外に身近に潜んでいる〜

楽器はすべてそうですが、消耗品の購入やメンテナンスなど、維持費がかかるものです。
どんな楽器だって「一度買ったらずっとそのまま使えます」はあり得ません。

ハープの弦は切れるもの。
弦が切れたらその音は出せないのですから、消耗品の購入は切実な問題です。

「スペア弦を購入するときは、どこに注文して、どのように支払うのか」のルールは、それぞれの学校によって違っています。
いざというときに困らないよう、前任者に連絡を取るなどして下記のようなことを確認しておきましょう。

 ・どこに注文するのか(楽器の購入店? 地元の楽器店? メーカーに直接? など)
 ・支払いのルール(担当者が立て替えて後日部費で精算? 学校あてに直接請求? など)

また、使用頻度や環境にもよりますが、ハープは6、7〜10年に1度は《調整》というメンテナンスが必要です。
メンテナンスや、突然の事故で修理をしなければならなくなった場合に備えて、

 ・購入はいつごろ、どこからしたのか
 ・保証書はどこにあるのか
 ・前回メンテナンスしたのはいつ頃か

なども確認しておくことをお奨めいたします。



「学校ハープの1年」、次回5月は「曲が決まった!でもハープは謎だらけ」の予定です。
チューニングなど、楽器の取扱について一般的なことを取り急ぎお知りになりたい方はこちらをご覧ください。