こんなときは(トラブルシューティング)
弦が切れた
ハープは日常的に弦の切れる楽器です。特に湿度が高く、温度の変化の大きい時期(日本の場合、梅雨期~夏)には頻繁に切れます。時おり「全く弾いていないのに切れたのはどうして?」「昨日はこの弦、今日はこの弦が切れた。おかしいではないのか?」といったお尋ねをいただくことがございますが、使っている・いないにかかわらず弦は切れます。同じ弦が数日のうちに何度も切れるというのでなければ、ハープではごく当たり前のことで異常ではございません。
いざというときにあわてないよう、お手元にスペア弦を1セットはご用意しておくことをおすすめします。コンサートや発表会などの際には必ず、楽器とともにスペア弦もお持ちください。
低音部のワイヤー弦(金属弦)は切れにくいのですが、古くなると急激に音色・音量が劣化します。2~3年を目安に張り替えた方がよいでしょう。
なお、弦は湿気や直射日光、熱に弱いので、スペア弦は密閉できる容器に入れ、直射日光のあたらない場所に保管してください。
同じ弦が何度も頻繁に切れる場合には、弦を通す部位に異常がないか点検し、あわせて張る際の手順も今一度ご確認ください。
チューナーなどの基準音がずれている場合もあります。
弦の張り替え方
(1)準備
まず、ディスクやフックなど余計なところに弦を引っかけずに作業ができるように準備します。グランドハープ(ペダルハープ)の場合は、ペダルをナチュラルの位置(ペダルスロットの一番上)に戻します。ノンペダルハープ(レバーハープ)、サウルハープの場合にはフックを下ろします。
スチール弦の交換の際には弦を切るためのワイヤーカッターなどの工具、指先を保護するための軍手なども用意しましょう。
(2)古い弦や切れた残りの弦をはずします
チューニングピンに弦の端が残っているときには、チューニングハンマーで反時計回りに回してはずします。弦の端で響板・響胴・腕木などを傷つけないようにお気をつけください。
(3)ガット弦・ナイロン弦の場合には弦の端を結びます
いろいろな結び方が教本等に載っていますが、基本的には弦がしっかりとまっていれば大丈夫です。
下記の図はその一例の結び方です。
※高音域の細い弦は、この結び目だけでは響板の穴から抜け出てしまいますので、ナイロンまたはガットの太い弦を1.5cmほどに切った切れ端を支えとして結び目に通して使います。支えは結び目の輪の、弦の長い端を引っ張ると締まっていく内側に差し込みます。
(4)響板の裏から弦を通します
端に結び目を作った弦を用意し、響胴の後ろの穴から弦端を持って入れ、響板の裏の穴から表のハト目に弦を通します。弦を真上に引き上げると摩擦によって削れて切れやすくなりますので、響板と垂直に引き出します。
(5)弦を巻き上げます
引き出した弦の端をチューニングピンの穴に通し、巻き上げます。
弦は基本的に内側(楽器の腕木側)に向かって巻いていきます。
ハープでは、音域によってスチール弦・ガット弦・ナイロン弦の3種類の弦を使っていますが、それぞれ素材や太さによって伸縮や滑り具合に差がありますので、張り方も異なります。
・ワイヤー弦(スチール弦)
- 低音域に使われている金属弦はほとんど伸びません。
- そのまま巻きはじめると、すぐに切れてしまいます。
- 巻きしろを確保するために、必ず3~4センチほど弦を戻し、少したるませてから巻きはじめます。
- 細い弦のように外側に巻く必要はありません。
- また金属弦は、一度曲げた場所が切れやすくなる性質があります。
- 巻き直しをすると切れてしまう場合がありますのでご注意ください。
・中音域のガット弦やナイロン弦(ノンペダルハープの場合)
- チューニングピンの穴から弦を通します。
- 弦は上にピンと張った状態からそのまま巻き上げはじめます。
・高音域のナイロン弦
- 弦が細く、材質的にも滑りやすい弦です。
- そのまま巻くだけでは弦がゆるみがちです。
- 下記の手順のようにして巻き上げるとゆるみにくくなります。
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胴の後ろの穴から弦の先を通し、響板のハト目から響板に対して垂直に弦を引き出します。
このとき、まっすぐ上に弦を引き出してしまうとハト目で弦がこすれ、切れやすくなる原因となります。
引きだした弦をチューニングピンの穴に通し、ピンと張ったあと、巻きしろ分として2~3センチほど弦を戻してから弦の端を持って巻き始めます。
最初の1巻き目は弦を外側(楽器と反対側)に巻いていきます。
1巻きして、チューニングピンの穴から弦の端が出ている場所まできたら、弦を今まで巻いた上に斜めに渡して交差させ、今度は内側(楽器側)へと巻いていきます。
弦を1巻き半したところ。
チューニングピンはこのようになっています。
弦を2巻きしたところ。
このまま音程が合うところまで内側へと巻いていきます。